山の麓にたどり着いたときは、既に当たりは日が暮れていた。
まだここから森の中に入る。
足は疲れていたが、それでも答えを見つけたい一心で山の奥深くへと入っていく。
暗闇の山の中は不気味だった。
何か恐ろしいものが出て来てもユキは怖がる気持ちなど微塵もなかった。
それほどにまで張り詰めて、山をざくざくと登っていく。
木の根っこが盛り上がった場所に来たとき、足元がよく見えずユキは躓づき転んでしまう。
張り詰めたものまでこけた拍子に割れてしまい、また涙がじわりと出るともう抑えきれず地面に倒れたまま大声で泣いてしまった。
すると、急に辺りがざわめき出した。
羽をバタバタさせる音、鳥が囀る音、カラスの声、いろんな音が混ざりあっている。
顔を上げると周りの木に鳥たちが何十羽と枝にとまっていた。
ユキは襲われることを懸念して咄嗟に立ち上がった。
だが鳥たちは首を時折忙しく動かしながらユキをただ見ていた。
「もう私を襲わないの?」
カラスが一羽、その質問に答えるようにユキの側に舞い降りてきて、 一礼をしたかのように首を動かした。
そしてピョンピョンと跳ねるように進み、またユキを振り返った。
「まるで、こっちこいって言ってるみたいね」
ユキは素直にカラスについていく。
他の鳥たちが木の枝に並んで、アーチを作るように歩く道を教えてくれていた。
そして案内していたカラスもそれに加わり、まるで鳥から枝にとまっている木を目印に歩けといわれているようだ。
暫く歩くと、辺りは霧に包まれていく。
どんどん霧は濃くなり、乳白色の中、とうとう何も見えなくなった。
それでもユキは手探りをしながらひたすら歩いた。
再び霧が晴れたときだった。
朝の柔らかな光が差し込み辺りが明るくなり、ユキは息を飲んだ。
「あっ、あれは」
ユキもよく知ってる木。
トイラが好きだったあの大木が目の前でずっしりと変わらない姿で現れた。
ユキは目の色を変えて走り寄る。
懐かしい人にでも会うかのように愛しく抱きしめた。
トイラが好きだった木。いつもトイラはここに座っていた──。
ユキの体は震え、また堰を切ったように泣き出した。
どれくらい泣いただろう。
辺りがまた暗くなっていた。
そしてカサコソとした落ち葉を踏んだような音が聞こえる。
振り返ったとき、ユキは目の前の光景に呼吸がふさがりそうになるほど驚いた。
まだここから森の中に入る。
足は疲れていたが、それでも答えを見つけたい一心で山の奥深くへと入っていく。
暗闇の山の中は不気味だった。
何か恐ろしいものが出て来てもユキは怖がる気持ちなど微塵もなかった。
それほどにまで張り詰めて、山をざくざくと登っていく。
木の根っこが盛り上がった場所に来たとき、足元がよく見えずユキは躓づき転んでしまう。
張り詰めたものまでこけた拍子に割れてしまい、また涙がじわりと出るともう抑えきれず地面に倒れたまま大声で泣いてしまった。
すると、急に辺りがざわめき出した。
羽をバタバタさせる音、鳥が囀る音、カラスの声、いろんな音が混ざりあっている。
顔を上げると周りの木に鳥たちが何十羽と枝にとまっていた。
ユキは襲われることを懸念して咄嗟に立ち上がった。
だが鳥たちは首を時折忙しく動かしながらユキをただ見ていた。
「もう私を襲わないの?」
カラスが一羽、その質問に答えるようにユキの側に舞い降りてきて、 一礼をしたかのように首を動かした。
そしてピョンピョンと跳ねるように進み、またユキを振り返った。
「まるで、こっちこいって言ってるみたいね」
ユキは素直にカラスについていく。
他の鳥たちが木の枝に並んで、アーチを作るように歩く道を教えてくれていた。
そして案内していたカラスもそれに加わり、まるで鳥から枝にとまっている木を目印に歩けといわれているようだ。
暫く歩くと、辺りは霧に包まれていく。
どんどん霧は濃くなり、乳白色の中、とうとう何も見えなくなった。
それでもユキは手探りをしながらひたすら歩いた。
再び霧が晴れたときだった。
朝の柔らかな光が差し込み辺りが明るくなり、ユキは息を飲んだ。
「あっ、あれは」
ユキもよく知ってる木。
トイラが好きだったあの大木が目の前でずっしりと変わらない姿で現れた。
ユキは目の色を変えて走り寄る。
懐かしい人にでも会うかのように愛しく抱きしめた。
トイラが好きだった木。いつもトイラはここに座っていた──。
ユキの体は震え、また堰を切ったように泣き出した。
どれくらい泣いただろう。
辺りがまた暗くなっていた。
そしてカサコソとした落ち葉を踏んだような音が聞こえる。
振り返ったとき、ユキは目の前の光景に呼吸がふさがりそうになるほど驚いた。