「ユキが目覚めた。助かったんだ」

「ユキ!」

「私、一体……あっ、トイラ!」

 トイラはユキを抱きかかえ、優しく天使のように微笑んでいる。

 ユキは自ら体を起こすと同時にトイラの手がふーっとユキから離れて行った。

 トイラは意識が遠のき、崩れていくようにばたりと倒れてしまった。

「トイラ! どうしたの」

 ユキはトイラの体を抱きかかえる。

 魂が抜けたような空っぽの体の先でグニャっと首がうなだれた。

 血の気がさっとひき、真っ青な顔つきとなって、ユキは震えながら何度もトイラの頬を撫でる。

「お願い。目を覚まして」

 その言葉に反応するように、ユキの胸の痣が光りを放ち、月の玉が浮き上がっていく。

 ユキの体から抜け出ると本来の場所に収まりたいと機敏な動きでトイラの胸へめがけて入り込んでいった。

 太陽の玉も追いかけるようにトイラの体の中へと溶け込んでいく。

 再び眩いばかりの光がトイラから放たれ、光が消えると同時にトイラは黒豹へと姿を変えた。

 ユキは黒豹のトイラを抱きかかえている。

 トイラの首がかすかに動くと、緑の目が黒い体に映えるように輝いた。

 黒豹はユキの腕の中で意識を吹き返し、突然驚いたように飛び上がって勇ましく構えだした。

 様子をさぐりながら、じりじりと後ずさりをしてはグルルルと小さく唸って威嚇していた。

 ユキはトイラが無事だったことで安心しきっている。

 何もかもうまく行った。

 一時の喜びが胸いっぱいに広がり安堵のため息が洩れた。