キッチンから漂う朝食の匂いにキースは反応し、くんくんと鼻を鳴らせている。

「なんか食欲をそそる匂いだね」

 フライパンをもっているユキの傍に来て覗き込んだ。

「椅子に座って待ってて。すぐできるから」

 先ほど見てしまった裸がちらついて、ユキはキースを邪険に扱ってしまう。

 トイラも現れると、さらに自分が犯した失態に身が竦んでしまった。

 普通を装うとしてもまともに顔がみられなくて、却って意識して一人気まずくなっていた。

 トイラとキースは朝の一騒動もすっかり忘れて、テーブルの上の用意された朝食をじっと見ている。

 ユキが目玉焼きとベーコンを運んでくると、キースは目を細めて喜んだ。

「僕、これ好きかも」

「温かいうちに食べて」

 ユキに言われるや否や、キースはベーコンをすぐに口に入れていた。

 トイラも黙々と食べだした。

 ユキがコーヒーを片手にしてテーブルにつくと、トイラが顔を上げた。

「ユキは食べないのか?」

「なんか今日は食欲なくてね」

 その原因を作ったのはあんたたちだと言ってやりたがったが、ぶり返すのが嫌で我慢した。

「俺たちのせいか?」

「いや、別にそうじゃないけど」

 直球を投げられたら否定するしかできなくて、ユキはあたふたしていた。

 話題を変えようと、ユキは昨晩の猫の事を持ち出した。