「何をするんだユキ」

「お願い、太陽の玉、出てきて」

 ユキがそう叫ぶと、ユキの胸の月の痣が光りだし、それに反応するように、ジークの体から太陽の玉が抜け出して浮きあがってきた。

 ユキはそれを掴むと同時に、この上ない激痛に襲われた。

「あああああああ!」

 絶叫は森全体に響き渡った。

 それを聞いたトイラとキースの顔が真っ青になった。

「ユキ!」

 トイラは加速して一目散に走った。


「ほほう、自ら太陽の玉を掴むとは。これで月の玉も早く出てくるだろう」

 思いがけない僥倖にジークは喜んだ。
 ユキは負けるかと太陽の玉を仁に投げた。

「仁、お願い、受け取って」

「何をする、ユキ」

 突然のことにジークはしまったと思った。

 仁はしっかりと太陽の玉を掴み、ユキから少しでも遠ざかろうともてる限りの力を振り絞って走った。

 ジークは体の上に乗っていたユキを突き落とし、仁を追いかける。

 ジークが仁に飛び掛かると、二人は地面に転げた。

 仁の手から太陽の玉がすべり落ち、地面に数回跳ねて叩きつけられていた。

 ジークはそれを追いかけようと立ち上がろうとするが、仁はジークを離すものかと抱きついてもみ合った。

 その時、トイラとキースが走ってくる。

 仁が戦っているのが目に入る。ユキも離れて地面に転がっていた。

「ジークは俺が始末する。キースはユキを頼む」

 トイラに言われ、キースはユキの側にかけ寄り、人の姿に戻ってユキを抱える。

「ユキ、大丈夫か」

 キースは体を起こすように倒れているユキを支えた。

 ユキは意識がある状態だったが、すぐさまキースの顔色が変わった。

 ユキの胸の痣が十三夜月の大きさになっているのが見えた。ほぼ満月といっていい形だった。