「痛い」

 ユキが顔を上げると、腰を抜かすくらいの大量の鳥が木の枝にとまってユキたちを見下ろしていた。

 ユキが震える手で仁に知らせる。

 仁はそれを見るなり 「あっ」と声を上げてしまった。

 鳥たちはその声を合図に一斉に襲い出した。

「うわぁ、今度は鳥だ」

 仁はユキに覆いかぶさるように地面に伏せた。

 容赦なく鳥は次々と仁をつつく。

「痛っ」

「仁、私のことはいいから、逃げて。鳥は私が目的なの。これもジークに操られているんだわ」

「嫌だ、僕は君を守る。絶対に守るんだ。僕だって、ユキを助けられる。助けられるんだ」

 仁は目の前にあった枝を手に取り、立ち上がって無我夢中で振り回した。

「仁……」
 
 ユキも枝を手に取り、必死で抵抗する。

 鳥の攻撃は一向に収まらない。

 抵抗が無駄だと思い知らせるかのように、次から次へと休むことなく攻めてくる。

 仁もユキも終わりのない戦いに、へとへとになっていった。

 しかしやめる事もできずボロボロになりながらも応戦する。

 それでも鳥たちは容赦なく二人を攻撃し続けていた。

「このー!!」

いつまで続ければいいんだと、仁は自棄糞で声を張り上げて吼えていた。