先ほどの良子の悲鳴を聞いた柴山は、声のする部屋へ無我夢中で飛び込んでいた。

 そこでソファーに押し倒されている良子を見て、髪の毛が逆立つほど憤慨した。

「俺の良子に何をする!」

 突然見知らぬ男が現れて驚く田島。柴山から思いっきりパンチをくらい、床に倒れこんだ。

「圭太……」

 男らしいその姿に良子は感動していた。

 柴山はハアハアと興奮状態で荒く息をして、良子をちらりと見て微笑んだ。

 ふたりの気持ちが通じていた。

「お前は誰だ、住居不法侵入で訴えるぞ」

 頬を押さえながら田島亮一が吼えた。

「ああ、訴えてみろ!お前のやってる不道徳な悪事をばらしてやる。写真もしっかり撮らせてもらったよ。トイラとキース返して貰うぞ。ケージの鍵を出せ。それとももう一発殴られたいか」

 田島が顔を歪ましてしぶしぶとポケットから鍵を出した。

 それを柴山から少しずれた方向へ投げた。

 柴山がそれに気を取られて、鍵を拾おうとした瞬間、田島が立ち上がり突然柴山に飛び掛った。

 二人は転げるようにもみ合う。

 良子はおろおろしながら、ホームバーのカウンターにあったワインのボトルを手にとって、田島の頭を殴った。

 ボトルがにぶい音を出し、田島は一撃で気絶してしまった。

 柴山と良子は顔を見合わせると、しっかりと抱き合った。

「圭太、ありがとう」

 それは勝気な良子らしくない、しおらしい一人のか弱い女性になっていた。

「当たり前だ、良子は俺のもんだ。とにかく、この続きは後だ。トイラとキースがまず先だ」

 倒れている田島亮一を尻目に、鍵を持ってふたりは走った。