「しかし、一体何の用だい?」

 田島は客間に良子を案内する。

 その部屋はヨーロッパの家具とアジアの値段の張りそうな骨董品がおかれ、値段は高そうだが趣味が悪い。

 ベルサイユ宮殿の中に仏像があるようなものだった。

 それをあたかも素敵だろうと田島が自慢する。

 お世辞にもいいとは言えず、良子の顔が引きつっていた。

 田島はホームバーがある小さなカウンターでワインのボトルを手にして、高いワインだぞと見せ付ける。

 ボトルオープナーでコルクをキュッキュッと開けはじめた。

「それにしても君がここに来るとはどういう風の吹き回しだい」

「ちょっと急に会いたくなってね、思い切って寄ってみたの。今まで冷たくして悪かったわ」

 良子はお色気プンプン匂わし、腕を組み胸を持ち上げ、谷間を強調してカウンターによりかかった。

 田島はその胸をちらりとみながらグラスを良子の前に置き、赤ワインをトクトクとついだ。

 ──ガチャーン!

 何かぶつける音が聞こえた。

 良子はびくっとなった。

 柴山が行動を起した──。

 田島は音に気を取られている。

 慌ててグラスを持ちググーっとワインを一気飲みした。

「美味しいワインね。ここは素敵なところね。今日はなんか帰りたくなくなってきたわ。もう一杯いただこうかしら」

 グラスを差し出し催促した。

 ついでに胸を揺らすのも忘れなかった。
 田島は良子の飲みっぷりとそのお色気に夢中になってきた。

 落とせるとばかりにニヤリと笑みをこぼす。

 良子は身の危険を酷く感じ、ハラハラと不安になってくる。

 ──早くしろ、圭太。

 田島が良子に少しずつ近づいていった。