眠たい目をこすり、欠伸をしながらユキは洗面所に顔を洗いに向かった。

 その入り口付近で、どんと軽く何かにぶつかった。

「あっ、ごめん」

 前を見れば誰かが立っている。

 水滴がついた小麦色の肌、腰周りだけタオルで包まれて、その下は足がすっと伸びていた。

 ほぼ裸に等しい。

「キャー!」

 ユキの悲鳴がトイラの耳を劈いた。

 その衝撃に、トイラの体は硬直し、髪は逆立ち、腰に巻いていたタオルが外れそうになって、慌ててつかむ。

「そっちがいきなり入ってきて、キャーはないだろ」

「だって、だって、人がいるなんて思わなかったんだもん」

 ユキは慌ててしまうが、鏡に映るトイラの背中が偶然目に入るとその衝撃に目を見開いた。

 まるで獣にでも引掻かれたような深い爪あと。
 あちこちにある無数の細かい傷。
 一体何をしてそんな体になったのか不思議なほど傷だらけだった。