注射を打たれたらもう一環の終わりだった。

「安心しろ、中を見るだけだ。まだ殺しはしない。これからゆっくり君達の体の作りを調べさせてもらうよ。まずは、生意気な黒豹君から行きましょうか」

 注射器がケージの中に迫ってくる。

 トイラは人の姿になった。

 そして手で田島の注射を持つ手をはたいて追い払う。

 田島は益々興奮していた。

「なるほど、人間の姿で解剖も楽しいかも。今まで動物でしかやったことなかったから、これもいいな」

 トイラの背筋が一瞬にして凍りつきぞっとした。

 狭いケージの中ではどうあがいても逃げられない。

 再び注射器が迫ってきたときだった。

 家の中でドアベルの音が響き渡った。

「あれ、誰か来たようだ。折角の楽しいときを」

 邪魔をされ残念な顔で、田島は部屋から出て行った。

 トイラとキースは助かったとばかり、胸をなでおろした。

 しかし一時しのぎにか過ぎないこの状況では、ぬか喜びと同じだった。


 日暮れと共に闇が迫る。

 暗い森林の中では魔物が潜んでいる不気味さがあった。

 田島の牙城がますます妖しく見えてくる。

「こんな山奥に大きな家というのか、建物があるもんだ。趣味悪そうだが、金持ちだな」

 柴山が呟いた。