「どうすればいいんだよ」

 トイラはケージの中で暴れた。

「止めろ、トイラ、無駄だ。ちょっとやそっと暴れたぐらいでは壊れないよ。鍵もつけられてるし、人の姿になって開けようと思っても、鍵がないとどうすることもできない」

 キースらしくない諦めた口調だった。

「じゃあ、このまま、されるがままになるしかないのか」

 トイラはケージを噛むが、さすがに鉄は牙では噛み砕けなかった。

 絶対絶命の状態に、二人はお手上げだった。

 ドアが開き、光がもれて黒い人影がコツコツと靴音を立てて近づいて来た。

 トイラとキースは息を飲む。

 ぱっと明かりが部屋全体につくと、田島亮一が怪しく眼鏡を光らせて二人を見下ろした。

「黒豹君、やっとお目覚めですか」

「ここから出せ! 俺たちをどうする気だ」

 トイラは牙をむき出しにして威嚇した。

「そうだな、どうすれば一番楽しいだろう」

 田島亮一はペロリと唇を舐めていた。

 まるで料理の仕方を考えているようだった。

 突然ひらめいたようにめがねが不気味に光りを帯びた。

 ごそごそと器具を触り始め、何かを準備する。

 手術で使う――見るからに解剖セットというようなものが、カチャカチャとぞっとするような音を立ててトレイに並べられた。

 そして田島の手にはゴム手袋がはめられ、わざとらしく引っ張ってパチッと音を立てた。

 キースもトイラもそれをみてぞっと身震いする。

 これから解剖始めます──。

 まさにその準備だった。

 注射器を手にとり、ちらりとトイラとキースを見て田島は気味悪い含み笑いを浮かべる。

「フフフフ、さて、どっちから体の中をみせてもらおうか」

「おい、まじだよ。こいつ。本当に俺たちを解剖する気だ。いかれたマッド獣医だぜ」

 トイラは焦り出した。