「うーん? ここはどこだ」

 トイラはケージの中で目を覚ました。

 頭をあげ隣の狼のキースと目が合えば、キースは無表情のままかしこまって座っていた。

「キース、俺たちなんでこんな狭いケージに入ってるんだ」

「なんだか、僕たち、動物実験でもされそうだな」

 キースが周りを見ろと、首を振って指図した。

 薄暗い部屋だがぼやっと色々なものが見えてくる。

 そこは動物病院の診察室でもあり、学校の理科の実験室にも見えた。

 棚や壁には、鹿や狐、熊といったいろんな動物の剥製が飾られ、ホルマリン漬けの何かのパーツが瓶にいれられたものもずらっと並んでいる。

 ワシントン条約で禁止されているようなトラや海がめ、ホッキョクグマの剥製まである。

 解剖もお手の物というように、手術台と照明までその部屋には用意されていた。

「なんだ、ここは。ホラー映画のセットか」

 トイラは突然身震する。

「大変なことになったよ。僕たち、きっと解剖されるんだよ」

「脅すなよキース」

「これが脅しだと思うか。あそこにある箱から、動物の死骸の匂いがするんだ」

 淡々と棒読みするようにキースは語る。

 感情が込められてないのに恐怖心がヒシヒシと現れていた。

 キースが示した方向には大きな白い四角い箱のようなものがあった。

 冷凍庫だった。

 その中に、実験で使われた動物が入っていると示唆した。