車は山の麓に向かって畑の間を走っている。

 人があまり住んでない地域。

 建物もない。

 山の中に入ればたくさんの木に取り囲まれた。

 坂道が続き、どんどん山に入り込めば、車はガタガタと振動していた。

 その途中で、古ぼけたお地蔵さんが立っているのが不気味だった。

 日も暮れかけて、山の中は益々ひっそりとして、意味もなく恐怖心を植えつける。

 誰も一言も話さず、行く先の見えぬ森の中で不安に行く末を案じていた。

 やっと田島亮一の動物実験センターと呼ばれる建物が視界に入った。

 山の中には似つかわしくないほど近代的でヨーロッパの神殿の風貌だった。

 ホテルか別荘か、はたまた美術館かというようなおしゃれっ気がした。

 そしてジークが占領している森から、そう遠くないところでもあった。



 一方、警察署で数人の警官に取り押さえられたジークは、たまりかねた様子でコウモリの姿に変身した。

 周りはあっという間にクモの子散らすように引いていく。

「豹と狼人間の次は、コウモリ…… えっ、まさか吸血鬼か」

 警察署の中は騒然となり、みんな震え上がった。
 
その隙をついてジークはパタパタと飛んで逃げていった。