「ユキ、ジークは裏切った」

 計り知れないショックが、仁から全ての血を奪ったように顔を真っ青にさせた。

「えっ? 何を言ってるの?」

「ユキ、僕、間違ってたのか? 本当に騙されたのか?」

 仁は、放心状態で突っ立っている。

「仁、どうしたの。何のことか説明してくれないと、わからない」

 仁は今までのいきさつを全てユキに話した。

 ユキが全てを知ったとき、体の震えが止まらなかった。

「それじゃ、私を助けようとして、ジークに騙されてしまったってことなの」

「ごめん、ユキ。僕、どうしてもユキを助けたくて、まさかこんなに簡単に騙されるなんて思わなかった。約束したんだよ。トイラとキースをユキから離したら、ジークはユキをもう無理やり追いかけないって。まさか全くの嘘だったなんて、僕、一体なんて事をしてしまったんだ」

 仁は跪き、悔しさをにじまして、床を拳で強く叩いていたた。

 ユキの手が仁の肩に触れる。

 憎しみは既に消えていた。

 トイラが言ってた言葉がこの時やっとわかった。

 仁は本当に何か訳があってやってしまったと言うことを──。

 全ては自分を思う気持ちが、引き起こしたことに過ぎない。

 仁もまた必死で助けようとしていた。

 ユキの胸のつかえはすっと氷解していった。