「ユキちゃん、ほら食べて。とにかく腹が減っては戦はできぬ。まずは腹ごしらえから片付けましょう。それからまた考えましょう、ねっ」

 目の前には湯気が立つおいしそうな食事。

 ユキはごくりと唾を飲み込み、涙を手で拭うと箸を取った。

 仁の母親は優しく微笑み、早く食べなさいと目でユキに語っていた。

 『いただきます』と箸を持つ手を震わしながら口にする。

「おいしい。本当にありがとう」

 温かい食事がユキを元気つけた。

 ──トイラたちもちゃんとご飯食べてるだろうか。

 不当な扱いをされているのではと思うと気が気でない。

 自分がしっかりするためにも、ユキは噛みしめながら出されたものは残さず全部食べた。

 食欲が満たされれば、次に襲ってきたのは眠気だった。

 こっくりと頭が揺れる。


「ユキちゃん、遠慮しないでいいのよ。ちょっとソファーに横になりなさい。少し寝た方がいい」

 仁の母親は、クッションを置いて、ユキを横にさせてやる。上からブランケットがふわっと優しくユキを包み込んだ。

 気持ちがいい──。

 眠気に勝てず、そのまますっと眠りについていた。

 仁の母親はユキをそっとして、ゆっくり寝られるようにとそのまま買い物に出かけていった。