学校の校門を潜れば、レポーターはもう来なくなった。

 安心したのも束の間、今度は学校中が奇異の目でユキたちをみていた。

「みんな、もうテレビ見て知ってるんだ。次は教室の中で揉まれそう」

 ユキは覚悟して教室に向かった。

 がやがやしていた教室は、三人がやってくると、水を打ったように静かになった。

 キースにお熱を上げていた女生徒たちも近づこうとも挨拶しようともしなかった。

 どこかみんな警戒している。

 そんな中でひとりだけユキに近づくものがいた。

「おはよう、春日さん」

 マリだった。

 そしてトイラとキースのことを奇妙な面持ちで尋ねてくる。

「あのさ、テレビで変なものみたんだけど、あれって本当はどうなの?」

「やだ、矢鍋さんまであの話信じてるの? もちろん嘘に決まってるじゃない。もうやだ」

「そっか、やっぱりやらせか」

 マリはあっさりとユキを信じた。

 この間から二人の関係はどこか距離が縮まっていた。

 ミカが教室に入ってきて、颯爽にキースに近づいていった。

「おはよう、キース。この前はありがとうね。これ、お礼」

 手作りクッキーをキースに手渡した。

 トイラはそれを見て怯えていた。

「アリガト、ミカ。ウレシイ」

「いいのよ。だって私をお姫様抱っこして家まで運んでくれたんだもの。キースは私の王子様よ」

 目がハートになっているようだった。

「ちょっとミカ、あなた、朝のニュースみてないの?」

 誰かが小声で聞いていた。

「えっ、あれ、もちろん観たわよ。あんなの嘘に決まってるじゃない。みんなそんなこと信じてるの。その方がいいわ。これでキースに近づけるのは私だけになる。ふふふ」

 それを聞いて、キースを慕っていた女子生徒たちは、顔色が変わった。

「えっ、ミカはトイラ派だったじゃない」

「ううん、キース派よ」