ユキは何を思ったか居間に走って、すぐにテレビをつけた。

 チャンネルを変えていると、自分の家が映っているではないか。

「やだ、ほんとにワイドショーに映ってるじゃない。一体何が起こったの」

 トイラとキースもそれを見て驚いている。

 画面には自分たちの写真が紹介され、その後で黒豹と狼の写真が映された。

 目は黒い線で隠されていたが、その写真にはちゃんとユキも写り込んでいる

「これ、昨晩のあのときに撮られたんだ」

 ユキは怒りで爆発した。

 誰がやったかすぐに分かるとすごい剣幕で電話を掛けだした。

 自分の部屋で着替えをしていた仁。

 突然鳴り出した携帯電話の音に、動きが止まった。

 ディスプレイにはユキの名前が入っている。

 覚悟を決めて、通話ボタンを押した。

「もしもし」

「仁、なんて事をしてくれたの。どうして、どうして裏切ったの」

 ユキの声が耳に刺さる。

「ユキかい。どうしたんだい。こんな朝から」

「よくもとぼけてられるわね。昨晩ジークのフリをしてここへ来て、トイラとキースの写真を撮ったでしょ。どうしてこんなことするの」

 仁はこんなにも早く柴山が行動に移すとは思わず、もう大きなニュースになってることをこの時初めて知った。

「なんのことだい」

「仁、もうとぼけないでよ。今、家の周りにワイドショーのレポーターが一杯来てるの。そして生中継でテレビに私の家が映ってるわ。柴山さんに秘密を教えたんでしょ」

「ユキ、落ち着くんだ」

 これは君を救うためなんだ。仁はぐっと体に力を入れた。

「何が落ち着けよ。仁、お願い、助けて。柴山さんにこの騒ぎを止めるように言ってよ。あれはコラ写真だっていえば済むことでしょ」

「ユキ、今忙しいから、また後で話を聞くよ。後少しの辛抱で全てが片付く、それまで我慢して欲しい」

「仁、何を言ってるの? 一体何を考えてるの? 仁!」

 ユキが質問したとき、すでに電話は切れていた。

 ユキは呆然と受話器を持ったまま立っていた。