「ちょっと、待って、じゃあ二人がここに居るのは偶然って事なの?」

 ふたりを知ろうと思えば思うほど分からなくなってくる。

「話せば長くなる」

 トイラはそれ以上話すつもりはなさそうだった。

「だからそのうちわかるって。それまでこのままで楽しもう。しばらくこの状態が続いてほしいよ、なあ、トイラ」

 いちいち引っかかるような言葉をキースは使う。

 何かを問い質す度、ユキの眉間にしわが増えるだけだった。

 夕食後、ユキがお皿を洗おうとすると、トイラはユキを押しのけてシンクの前に立つ。 

「これ洗うんだろ。俺がする」

「えっ、あ、ありがとう」

「これを使うのか?」

 トイラがスポンジを手にしたので、ユキは洗剤を掛けてやる。

 黙々と洗物をしだしたトイラの横で、呆然とユキは立ってみていた。

「それじゃ、僕は邪魔だろうからあっちに行ってるね」

 意味ありげにキースは笑ってさっさと居間のソファーに向かった。

 手伝わずに逃げただけだとユキは思っていたが、トイラがそれに反応した。

「うるせいっ」

 なぜトイラがそう言ったのか、この時ユキはまだわからなかった。