「集中力が高まって、できたときの達成感が気持ちいいんだよ。やるとはまるぜ。森では悩みがあるとみんなこれをして、忘れようとするんだ。考え事をしていたら絶対にできない作業だからね。ユキももう一回やってごらん」

 言われるままに、ユキは神経を集中してやってみた。途中トイラのアドバイスもあり、今度は奇跡的になんとか全部積み上げられた。

「あっ、できた。ほんとだ、できるんだ。すごい」

「なっ、気分いいだろ」

 ほんのちょっとの数秒積み上げられたままだったが、その後ぐらついてあっという間に崩れてしまった。

 ユキはその石を見てると急に笑い出した。

 石の積み上げごときに真剣になれる事がおかしい。

 トイラも一緒につられて笑っていた。

 トイラが立ちあがって、ユキに手を伸ばした。

 ユキはその手を掴んで立ち上がると、トイラは引き寄せて抱きしめた。

 柔らかいと思ったそのとき、目の前には黒豹が立っていた。

「やだ、トイラいつのまに変身してたのよ」

「もふもふしてて、こっちも悪くないだろう」

 黒豹のトイラもユキはもちろん大好きだ。

「ねぇ、トイラは人間の姿と黒豹とどっちが本当のトイラなの?」

「えっ? どっちっていわれても、どっちも俺さ。どうしてそんなこと聞く?」

「どっちの姿のときに私と一緒に寝たいのかなって思って」

「えっ? なっ、なんだよ、露骨に」

 トイラはユキからそんな質問がでるとも思わず、面食らっていた。

「なんてね。アハハハ、おかしい。トイラが焦ってる」

 トイラは黒豹の姿のままユキのホッペをペロリと舐めた。

「お前、食っちまうぞ」

「いいよ」

 真剣な顔をしてユキは答えた。