ハアハアと息を切らせて、後ろから誰も来ないことを確かめると、フードを頭からはずす。

 仁の顔がそこにあった。

 その後から白いミニバンが仁の元へやって来ると、それに素早く乗った。

 運転席では信じられないという強張った顔で、柴山が車のハンドルを握っていた。

「仁の言ったことは本当だったんだ」

「写真ちゃんと撮った?」

「ああ」

 柴山はユキの家の庭に入り込み、隠れてトイラとキースの写真を撮っていた。

 まだ自分が見たものが信じられないのか、仁の顔を見て再度確認する。

「柴山さん、スクープでしょ。これなら文句なしに注目を集めるよ」

「仁、これはすごいよ。こんなこと目の前で見た俺でも、ぶったまげたよ。だけど、どうして俺にこんなこと教えるんだ」

「そ、それは、あれだよ、良子さんのためだよ」

 仁はユキの胸にある月の玉の秘密と、ジークとの取引きのことまでは話せなかった。

 咄嗟に嘘をつく。

「良子のため?」

「良子さんはまだ柴山さんのこと忘れられないんだよ。柴山さんが有名なカメラマンになったら、迎えに来て貰えるって未だに信じてるんだ。良子さんももう若くないしさ、ついほっとけなくて」

「仁! お前、そんな理由で俺に手柄を立てさせようとしてるのか。わかったよ。お前の期待に応える様に頑張るよ」

 なんとかいい方向にいったのか、仁はほっとしていた。

 しかしこの後が正念場だった。

 仁はこれから上手く事が運ぶことを願った。

 全てはユキのため、ユキを救うためと心を鬼にした。