暫くした後、仁はドレスを着たユキを連れて自分の家に連れて行った。

 ユキは上にショールを羽織って、露出した部分を隠していた。

 後ろからキースも護衛のように付いて来ている。

 キースは仁がユキを好きなことを充分に知っているかのごとく、一定の距離を取って歩いていた。

 トイラの味方とはいえ、仁の切ない気持ちも充分に理解していた。

 それもまたキースには見ていて辛かった。

 ユキと肩を並べて、仁は話すこともせずうつむいて歩いている。

「仁、どうしたの。ずっと暗いよ」

「えっ、ごめん。ちょっと考え事をしていた」

「私のこの胸の痣のこと?」

 ユキは言いにくそうに声が小さくなっていた。

「なあ、ユキ、もしもだよ、もしも僕が君を助けることができたら、トイラよりも僕の方を見てくれる?」

「えっ? トイラですらまだ方法がわからないのに、仁がそんなこと……」

「できる訳がないってかい? でも僕、本気なんだ。君を救いたい。犠牲を払ってでも、君を救いたいんだ」

 その台詞は仁の心の決心を表していた。

「仁、ありがとう。気持ちだけで充分よ。仁には本当に感謝している」

 ユキは仁に優しく微笑む。

 二人の会話はキースの耳にも届いていた。

 キースは仁のユキを思う気持ちがあまりにも切なくて、聞いてしまったことを後悔していた。