「なあ、トイラ。もし、ユキを助けられる方法が見つからなかったら、どうするんだ」

 仁はトイラがなんて答えるか直接聞きたかった。

「そのときは、ユキの命の玉を貰う」

 真剣な目で答えるトイラに、仁はショックを隠せなかった。

「もっと言い方があるだろう、絶対方法を探すとか、諦めないとか。そんな答え方するなんて、トイラらしくない。もう諦めたと同じことだ」

 人の頭に血が上る。

「すまない、仁。俺も一生懸命考えているんだ。だが、ユキを失いたくない気持ちが強くて、つい言ってしまった」

 二人の雰囲気が険悪に見えたのか、キースが話題を変えた。

「だったらさ、助かる道を見つけた場合は、トイラどうするんだ」

「そうだ、助けた場合、トイラはどうするんだ」

 仁も気になった。

「そのときは俺がユキの側にずっといる。ユキが年を取っても最後までずっと側にいる」

 その答えも仁には気に入らなかった。

『トイラが居る限り、ユキの心はずっとトイラに向いたままだ』

 ジークの言葉をまた思い出した。

「なんだよそれ、まるでハイランダーの映画みたいだよ。観たよ昔、妻は年をとるけど、ハイランダーの宿命で、地球に二人以上ハイランダーが居るとずっと年を取らずに死なない戦士の話」

 仁は興奮していた。そんな映画の話を言ったところで、二人にはちんぷんかんぷんだった。

「おいおい、仁、そうかっかするなって。トイラも悩んでいるんだ。わかってやってくれ」

 キースはトイラの味方だ。

 仁は自分の気持ちなど、誰にも理解してもらえないのも腹ただしく悔しかった。

 この二人が居なければ、ユキは普通に人として暮らせるのにと益々思ってしまう。

 仁は決心する。

(ユキをまともに救えるのはこの僕しかいない)

 仁はその後、トイラとキースと口をきくことはなかった。

 二人は仁がユキを助けたい一身で、方法がみつからないことを怒っていると思っていた。

 まさかジークとの取引を考えているとは、誰にも想像ができなかった。