「ユキ、どうしたの。ドレスが気に入らないのかい?」

 仁は不安になった。

「違うの、とってもかわいいし、すごく気に入ったの。でも……私の姿をみても、気にしないでね」

 ユキが思い切ってみんなの前に現れた。

 夏らしいデザインで、本当にかわいらしい姿だった。

 だが、胸の部分が露出していたので、あのアザがはっきりと出てしまっていた。

 それを見せることをユキは躊躇していた。

「ユキ、その痣、もう九日月じゃないか」

 半分に見える上弦の月の形からやや膨らんでいる。トイラは驚きの色を隠せないでいた。

 確実にユキの痣は満月に近づいていたのを目の当たりに、どれほどの罪悪感を感じたことだろう。

 キースも凍りついて黙りこんでいた。

 仁はトイラとキースがその痣をみて、驚いていることの重大さが重くのしかかった。

 ユキには時間がないことが二人の行動から読み取れた。

 トイラはまだユキを救う方法を見つけていない。

 益々、ジークとの取引が心の中で大きくなっていった。

「やだ、みんな暗くならないでよ。ほら、ちゃんとドレスをみて。ねっ、かわいいでしょ、私」

 くるっと一回転すると、ドレスの裾が広がって、きれいな円形を描いていた。

「仁のお母さんにお礼を言わなくっちゃ。こんなかわいいドレス着られるなんて、私幸せよ。仁、本当にありがとう」

「それじゃ、後で僕の母にもその姿見せてやってくれるかい。ユキが着るのをすごく楽しみにしてたんだ」

「もちろんよ。後でお礼を言いに行くわ」

 ユキはお茶の支度をしようと、キッチンに向かった。

 トイラとキースは暗い表情で何かを深刻に考えている。

 その様子を仁はじっと見ていた。