ユキは父親とふたり暮らしが長いので、家事は大体ユキが担っている。
母親は早くから他界し、父親と助け合って暮らしてきたから、食事を作ることには問題ない。
だが、このふたりが何を食べるのかがわからなかった。
買い物している時間もなく、家にあるもので作るしかなかった。
突然押しかけてきたふたりにいちいち気を遣うこともないと開き直ると、適当に準備しだした。
「いい、食べるときは、日本では両手を合わせて『いただきます』というのよ」
テーブルに料理を並べ、日本の食事マナーをふたりに教え込むユキ。
トイラとキースは言われたとおりに素直に「いただきます」と真似をした。
その動作が不覚にもかわいいと思え、ユキは母性本能をくすぐられてしまった。
仕方ないとはいえ、ふたりの面倒をみることになってしまったが、食卓を囲むこの雰囲気は悪くなかった。
ひとりのときよりずっと楽しい。
ついほんわかな気分に飲み込まれ顔が綻んでしまったが、それをふたりに知られるのが恥ずかしくて姿勢を正して、ユキも「いただきます」とかしこまった。
食卓にはご飯と、味噌汁、焼き魚に、煮物、そういったものが並んでいる。
純和風だが、魚は焼いただけだし、煮物は作り置きしていたものだし、作ったものは味噌汁くらいなものだった。
急に作れといわれたら、こんなものしかできなかった。
いくら気を遣うことはなかったとは言え、ふたりが箸を動かさずにじっと見つめていると、ユキは少し不安になった。
「これ、何? 食べられるの。たまねぎ入ってないよね。僕もトイラも玉葱は嫌いなんだ」
慎重に料理を見ていたキースが訊いた。
キースは柔らかな物腰のくせに、小さなことをいちいち気にしそうな細かさが目に付く。
しかしトイラは一通り見た後、何も言わず黙々と食べだした。
箸も結構上手く持っている。ユキの作った料理を一心不乱に食べていた。
その食べっぷりはユキは見ていて気持ちよかった。
母親は早くから他界し、父親と助け合って暮らしてきたから、食事を作ることには問題ない。
だが、このふたりが何を食べるのかがわからなかった。
買い物している時間もなく、家にあるもので作るしかなかった。
突然押しかけてきたふたりにいちいち気を遣うこともないと開き直ると、適当に準備しだした。
「いい、食べるときは、日本では両手を合わせて『いただきます』というのよ」
テーブルに料理を並べ、日本の食事マナーをふたりに教え込むユキ。
トイラとキースは言われたとおりに素直に「いただきます」と真似をした。
その動作が不覚にもかわいいと思え、ユキは母性本能をくすぐられてしまった。
仕方ないとはいえ、ふたりの面倒をみることになってしまったが、食卓を囲むこの雰囲気は悪くなかった。
ひとりのときよりずっと楽しい。
ついほんわかな気分に飲み込まれ顔が綻んでしまったが、それをふたりに知られるのが恥ずかしくて姿勢を正して、ユキも「いただきます」とかしこまった。
食卓にはご飯と、味噌汁、焼き魚に、煮物、そういったものが並んでいる。
純和風だが、魚は焼いただけだし、煮物は作り置きしていたものだし、作ったものは味噌汁くらいなものだった。
急に作れといわれたら、こんなものしかできなかった。
いくら気を遣うことはなかったとは言え、ふたりが箸を動かさずにじっと見つめていると、ユキは少し不安になった。
「これ、何? 食べられるの。たまねぎ入ってないよね。僕もトイラも玉葱は嫌いなんだ」
慎重に料理を見ていたキースが訊いた。
キースは柔らかな物腰のくせに、小さなことをいちいち気にしそうな細かさが目に付く。
しかしトイラは一通り見た後、何も言わず黙々と食べだした。
箸も結構上手く持っている。ユキの作った料理を一心不乱に食べていた。
その食べっぷりはユキは見ていて気持ちよかった。