キースは何やら台所でごそごそしていた。

 ユキは見守るように少し離れて見ていた。

 だが鼻をつまんでいる。

「キース、これ何の匂い?やだ、なんかおぞましいよ」

「薬草さ、今朝、林の中で種類が似たのがあったので、トイラのために薬を作ってるんだ。これを飲めば、多少は早く回復するさ」

「えっ、それを飲むの?」

 ヘドロのような緑、どろっとして、見るからに苦そう。

 どうみても口に入れられた代物ではなかった。

 ユキはトイラに同情した。

 トイラはソファーで無表情に座っていた。

 だが目はユキを常に追っていた。

 ユキと目が合う。

 ユキはにこやかに笑っている。

 トイラもそれにつられて軽く笑みをこぼした。

 キースが湯飲みに薬草汁を入れて、トイラの前に持ってきた。

 目の前の空気を腐らすような勢いの匂いが立ち込めた。

 ユキも一緒になって様子を伺っている。

 ユキとキースが顔を見合わせた後頷いて、にたっと歯を見せて笑っている。

 トイラは湯飲みを手にして、それを躊躇わず一気に飲み干した。