朝、トイラが目覚めたとき、ユキはもうすでにベッドからいなかった。

 早く起きて朝食の支度をしにいったとはわかっていたが、ユキが傍にいないのがトイラには寂しくてたまらない。

「俺はやはりユキなしではいられない。ユキと離れてしまうことなど考えられない。助けたくともその術がわからないのなら、来るべきときが来るとしたら、俺はユキの命の玉を取ってまでユキの全てを奪おうとするのかもしれない。もうそれが俺の答えなのか。失いたくないものは奪うことしか選択は残されてないのだ ろうか」

 トイラの精神は不安定になっていた。

 時間がない焦りと、失うことの恐怖、森の守り主の責任感、そして自分の中の豹の部分の驚異的な力がトイラを追い詰める。

「くそっ!」

 動きの鈍い体を、必死にベッドから起こして、立ち上がった。