「いや、トイラっていう外国人も傷を受けて、ここでさっき手当てしてたんだよ。仁の、ああ、こいつのことだけど、友達なんだ。あとユキちゃんっていうトイラの彼女も一緒だったんだ」

「えっ、ユキちゃんは仁の彼女じゃないの?」

 姉の話から良子は仁とユキが恋人同士だと思い込んでいた。

「良子は鈍感だな。仁は片思いさ」

 柴山が仁の顔を見て確認しろと、指を差していた。

 仁はむすっとして、この件には触れて欲しくなく目線が逸れた。

 ジークはそのやり取りをじっとみていた。

 口元はニヤリと笑っている。

 そのとき、柴山の携帯が鳴り、建物の外へ彼は出て行った。

 同じように受付に人が来たのか、良子も対応でその場を去った。

 診察室で仁とジークが二人きりになってしまい、仁は緊張していた。

「何も緊張することないさ、私は君に危害を加えない。君の知り合いに助けてもらって感謝してるぐらいだ」

「お前は僕の敵にはかわりない。ユキをこれ以上苦しめるな。トイラに太陽の玉を返せ」

 拳を力強く握り、背筋を伸ばして精一杯挑むように睨んでいた。

「ユキのことが好きなのか」

「そんなことお前には関係ない」

「どうだ、助けてくれたお礼もあることだし、私と取引をしないか」

 ジークは目線を上目遣いに、子供がおねだりをする目で、仁に笑みを浮かべていた。