ユキの体がふわっと持ち上がったかと思うとトイラは抱きかかえてソファーに座らせてやった。

 それを見たキースがニヤッと笑みを浮かべていた。

「そうこなくっちゃ」

 キースが囃し立てると、トイラはまた自分を押し殺して無理に冷たい態度を装ってユキから離れた。

 ユキだけが理由(わけ)が分からずに放心状態でそれを見ていた。

 何かが起こっているのは確かだった。
 肝心な部分が全く思い当たることもなく見えてこない。

 でも直感が働いて何かを感じ取っているようにも思う。

 なんだかもやもやすると同時に、無性にトイラのことが気になってしまう。

 横目でトイラを見ながら、ユキは絡まったこの状況を必死に解こうとしていた。

 人が真剣に悩んでいるときにキースの暢気な声が邪魔をした。

「なあ、ユキ、お腹空いた」

 時計を見れば、まだ夕食にするには早かったが、キースは我慢ができそうになく、目をうるうるさせて媚びている。

「仕方ないわね。わかったわよ」

 ユキは立ち上がりキッチンに向かい、冷蔵庫を覗き何が作れるか考える。

 まずは片付けられる問題から片付ければいい。

 ふたりのために、夕食の準備にとりかかった。