「良子、悪いんだけど、また怪我してる外国人、みつけちゃったよ。ちょっと診てやってよ」

「えっ、また、人間? だから私は獣医だっていうの!」

 柴山の担いできたジークを見るや否や仁は驚愕する。

「ああ!」

「どうしたんだ、仁。なんか変だぞ、お前」

 仁を見る柴山の目が鋭さを増していた。

「えっ、別になんでも」

(どうしよう。こんなことって。だけどこいつをやっつけるチャンスかもしれない)

 仁は、急に鼻息が荒くなって、何かをやる気になっていた。


 ジークは診察室で、椅子に座らされ、良子が傷口を消毒していた。

「この傷は、獣に襲われた感じよね。もしかして、今噂になってる、狼と豹にひっかかれたとか?」

 良子が半分冗談交じりでそういうと、柴山の好奇心の血が騒いだ。

 傍らで仁はジークを睨みながら、注意深く観察していた。

 ジークは視線に気がついたのか、仁と目を合わせた。

 その挑むような睨みで、すぐにトイラの仲間だと気がついたが、仁をみてにこっと微笑む。

 ジークは微笑むと優男にみえ、凶暴さが消えていた。

 その笑顔に仁は意表をつかれ、さっきまでの意気込みが突然弱くなってしまった。