柴山にトイラは担がれて、白いミニバンの運転席の後ろに乗せられた。

 ユキも一緒になってトイラの隣に乗った。

 仁もついて行きたかったが、くしゃみがでて怪しまれると危ないので遠慮した。

 助手席にはカメラや機材が無造作に置いてあった。

 ユキはそのカメラを見て、トイラとキースの秘密がばれないことを願った。

「君たち、一緒に住んでるのか。すごいな。そういえば、ユキちゃんとか言ったね。トイラとはかなり前からの友達? それとも恋人かな。残念ながら仁はユキちゃんに片思いって感じがするね」

 車を走らせながら、柴山は話していた。

 瞬時の鋭い観察力に、ユキは何を答えていいのかわからず黙っていたが、体は落ち着かずモジモジしていた。

「やっぱり図星だね」

「どうして、そういうことがわかるんですか。何もまだ言ってないのに」

「いや、あの恥ずかしがりやの仁が、君の事を呼び捨てしてただろ、あいつにしちゃ頑張ってる方なんだぜ。それだけで、君に夢中だってわかった。でも君は、トイラから離れない。そしてその君のトイラを見つめる目さ、そんな目ができるのは思いを寄せてるからさ。さらにトイラには秘密があるとみた」

 ユキはドキッとした。

 どこまでこの人は洞察力があるのだろうと、急に車の中の居心地が悪くなった。

「なんてね、職業柄、ついついゴシップ記事にするのが好きで、なんでもない日常な記事をドラマチックに演出するのも自分の仕事だからね。なんでもついつい脚色しちゃうのが癖なんだ。今回の狼や豹も蓋を開けたら、結局は町おこしの噂で終わるんだろうけど、まあ地元だし、面白いからちょっと遊んでやろうと思ってね。だからなんか話のネタになるようなこと知ってたら、教えてね」

「あっ、はい」

 その後柴山はべらべらとひとりで話をする。

 この町の出身やユキと同じ高校を卒業したことなど他愛もないことだった。

 ユキは相槌を打ち適当に聞いておいた。

 ユキは柴山とあまり関わりたくなかった。

 秘密を知られたくない不安が顔に表れていたのか、トイラがユキの手をそっと握る。

 そして何も心配することはないと、肌のぬくもりで伝えていた。