「いつこっちに戻ってきたのよ。一体何の用?」

 良子は冷たくあしらう。

 そんなこともお構いなしに男は辺りを見回した。

「おっ、仁じゃないか。大きくなったな。もう高校生か。それに何だい、動物病院に人間の患者って。しかも外国人。なんか訳ありな匂いがするな。いいネタになるかもしれない」

「いい加減にしなさい。売れない三流カメラマン!」

 良子がそういうと、男は突然不機嫌になった。

 虐めるのが楽しいのか、良子は上から見下ろすように鼻で笑っていた。

 そのやりとりを、おろおろしながらユキはみていた。

 それに良子は気がついてやっと紹介した。

「あっ、ごめんなさい。こいつ、高校時代の友達で柴山圭太、売れないカメラマンで、つまんないゴシップ記事ばかり追いかけてるの。それからこちらは仁の友達で、ユキちゃんと、トイラ君」

「おいおい、売れないは余計だろ。これでも腕は確かだぞ。まあマイナー雑誌だけどね。それに、かつての恋人でもあるだろ」

「私の汚点ね」

 良子はフンと蔑んだ。

「相変わらずだぜ」

 それでも柴山は、久しぶりに会えた良子の顔をみて嬉しそうに目を細めていた。

 そしてユキをみてよろしくと、キザにウインクした。

 二人の会話を聞いていると、息のあった漫才師のようで、ユキにはなんだかお似合いのカップルに見えた。