日本風の家でありながら、モダンを取り入れて居間は洋風らしく、ダイニングキッチンと続いて広々としている。

 ユキはこれからどうすべきか、ふたりを目の前にして腕を組んで考え込んでいた。

「僕たち、迷惑かけないから。安心して」

 追い出されては困ると、キースが媚をうるような目つきで、慈悲を訴えている。

 その横でトイラは寡黙にじっとユキを見つめていた。

 その緑の目は捉えどころがなく、何を考えているのかわからなかった。またそれがユキを惑わした。

「とにかく、この状況をパパに説明してもらわないと、私だって何をすべきなのかわからないわ。とにかくパパの職場に連絡してみるわ?」

「博士なら、今日僕たちと入れ違いにカナダに行ったよ」

 しれっとまたキースが言った。

「えっ、嘘ぉ! そんなの聞いてない」

 ユキは仰天する。

「本当だ。君の父親は今日本にいない」

 大したことでもないように、トイラはあっさりと言った。

「今朝までパパと一緒にいたのよ。そんな大事なこと一言も言わなかった」

 納得するほうが難しい。
 連絡先も告げられないまま、蒸発するように父親が海外に行くなんて不自然すぎた。

 いや、目の前のふたりが来ただけで何もかもが不自然ではないか。

 これは夢に違いない。

 ユキは自分で耳を塞ぎ込み目を閉じて現実から逃れようとしていた。

 でも目を開ければ、ふたりはそこにいて、ユキをじっと見つめている。

「なんかもう訳がわかんない」

 ユキは急に力が抜けてへなへなと床に座り込んでしまった。

「大丈夫かい、ユキ」
 条件反射のようにすばやくユキに駆け寄り、トイラはユキの体を抱え込む。