トイラをおんぶし、くしゃみも連発し、汗もかきながら仁はある場所へと向かっていた。

 途中道行く人に何事かと見られたが、怪我人をおんぶしている事より、仁の連続するくしゃみの方が目立ってたかもしれなかった。

 「あっ、ついたよ。クシュン」

 仁がつれてきた場所は、町の中心から少し離れ、落ち着いた雰囲気のする住宅街だった。

 その中にまぎれて、小さなこじんまりとした、白い四角い箱のような二階建てのビルが存在していた。

 そこには『アニマルケアーホスピタル』と書かれた看板が掲げられていた。

 仁はその建物のドアを開けようと手を伸ばす。

「仁、ちょっと、いくらトイラが黒豹だからって、動物病院って」

 ユキは驚いていた。

「ほら、前に話しただろ。僕の叔母が獣医だって。クシュン。僕の母の妹さ。良子さんって言うんだ。あっ、おばさんって呼んだら怒るんだよ。だから名前で呼んでるの。結構僕と仲がいいし、きっと助けてくれると思う。ハックシュン!」

「仁のお母さんの妹さん?」

 ユキは優しい新田仁の母親の姿を想像していた。

「すごく話のわかる人なんだ。とにかく任して。クシュン。人間も動物も傷の手当てはきっと一緒だよ」

 トイラを担いだ仁はドアを開けて入っていった。

 その後ろから半信半疑でユキもついていく。

 昼間の診察時間は終わっていたのか、幸い誰も来ていなかった。

 病院内に入るなり、大きなくしゃみが、小さな待合室で爆発した。

 それを聞いて奥から何事かと女性が現れた。

「なんだ仁か。あれっ? その背中のお友達、どうしたの。血が出てるじゃない。えっ、 外国人?」

 そこには仁の母親とは違うタイプの、セクシー系の女性が白衣を着て立っていた。

 ミニの黒いタイトスカートからきれいな足が見えている。

 胸は少しちらりと谷間がのぞくシャツを着て、肩まで届くストレートの黒髪がさらさらと艶を帯びていた。