キースはミカを抱き、テクテクと町を歩いていた。

 外国人が女の子を抱いて歩いていく様子は、道行く人の視線を全て集めていた。

 キースの嗅覚でミカがどの道を通っているのかすぐにわかるほど、ミカの家を見つけるのは朝飯前だった。

 途中、ミカの意識が戻り気がついた。

 目を開けたとき、キースが爽やかな笑顔で覗き込んだ。

 ミカは驚き赤くなるが、自分の状況を把握すると、段々とうっとりするような目つきに変わっていった。

「キガツイタ カイ? キ ヲ ウシナッテタ。ボク ガ ハコンデ キタ」

「えっ、私、気を失ってたの? 嘘、なんで」

 ミカはトイラを攻撃したことを全く覚えていなかった。

 キースは白い歯を見せて笑っていた。

 その笑顔は、ミカを少女漫画のヒロインのように酔わせた。

「トイラ ノ コト ユルシテ。アイツ、キゲン ワルイト ボク ニモ ツメタイ」

 ミカは、もうトイラのことなど、どうでもよかった。

 それよりもキースの方が優しくかっこいい。

 しかもお姫様抱っこされている。

 もうこの状況は、至福そのものだった。

「トイラが私に何をしたの。全然なんとも思ってないわ」

 調子のいいもんだった。

 ミカは、この状況を楽しむように、キースに抱っこされたまま、家まで運ばれた。