ジークの顔は喜悦いっぱいに、高らかに声を張り上げて笑っていた。

 アドレナリンが体全体に行き渡って、この上なく興奮しきっている。

 気分が高揚してトイラの頭をさらに強く踏み潰していた。

「なんて気持ちがいいのだろう」

 トイラはもがく。落ち葉に顔が沈んでいく。

 踏み潰される痛さより、ユキを助けることができない辛さの方が何倍も強く胸を締め付けた。

 必死に立とうと手で踏ん張ろうとするが、土を掴むばかりで無駄だった。

 ユキは制服のブレザーの襟をつかまれ、体を持ち上げられている。

 つま先が地面に触れているだけで、殆ど宙に浮いているといっても過言じゃない。

 息苦しい。

 何十本の針がユキの胸に突き刺さったような痛み。

 でもユキは弱音など吐いてられない。何がなんでも耐えなければいけない。

 ユキは体中の渾身の力を込めて、歯を食いしばった。

 絶対気を失いたくないという精神が、ユキを奮い起こす。

 気の遠くなるような痛さの中で、必死に立ち向かっていた。

 側でトイラのうめき声が聞こえる。

 このままではトイラも危ない。

 ユキは掴まれているジークの手の甲を、無我夢中で爪を立てて引っ掻いた。

 ジークは顔をしかめる。

「また抵抗するのかい、ユキ。無駄だというのがわからないのか。まあいい放してやろう。どうせお前一人ではこの状態で何もできないだろう」

 ジークはぱっと手を放すと、ユキは糸の切れた操り人形のように地面に倒れた。

 這うようにトイラの元へ近づき、トイラの頭を踏んでいるジークの足を、その辺に落ちていた木の枝を掴んで無造作に刺す。

「くそっ、何をする」

 ジークは刺された足で、ユキの顔を蹴飛ばした。ユキは後ろに倒れ、口角から血が滴った。

 それを見たトイラの目の瞳孔は開き、灼熱の怒りが渦巻いた。

「ユキに何をする。止めろ!」