ユキが教室に入るとマリとすぐさま目が合った。

「おはよう、矢鍋さん」

 ユキは思い切って挨拶してみた。

「あら、もう風邪はいいの。全然病気してたって感じがしないけど、トイラと一緒にずる休みしてたんじゃないの」

 相変わらず、鋭い突込みだ。しかし、その通りだから言い返せない。

「冗談よ。ところで、よかったらこれ見る? 昨日の物理の授業のノート。ここテストにでるってさ、重要らしいよ」

「えっ、いいの?」

 マリから受け取ったノート。手にずしりと重みを感じる。

 ユキがお礼を言った後、マリも照れた笑みを見せて、自分の友達の輪の中へ入っていく。

 お互いまだぎこちないけど、どちらも歩み寄ろうとしている。 

 ユキは席についてノートを見ながら、一人でにやけていた。

 マリのノートをパラパラめくれば、整った綺麗な字だった。

 マリの心の美しさを反映してるように感じた。

 ユキはすぐに返したくて早速急いで書き写し始めた。

 始業ベルが鳴り出す頃、ミカが遅刻ギリギリで教室に入ってくる。

 ノートを書き写しているユキの前にそっと現れた。