ジークが仕掛けた罠も知らず、テーブルを囲んでユキ達は夕食を取っていた。

「あのさ、トイラ、もっと気をつけてくれよ。仁だったから、よかったものの、これが他の奴の前だったら大騒ぎになってたよ。だけど一体何やってたんだふたりして」

 キースが箸をトイラに向けて振っていた。

「ちょっと、メイク・ラブを」

 トイラが恥ずかしげもなく言った。

 ストレート過ぎるその言葉に、ユキは飲んでいた味噌汁を吹いてしまった。

「トイラ、違うでしょ、ただじゃれてただけでしょ」

「どっちも同じ事だよ。とにかく、ふたりが元に戻ったのは僕も嬉しい。大いに発情してくれたまえ。だけど興奮して人前で黒豹にならないでくれよ」

 キースが警告をする。

 トイラはそんな事わかってると言いたげに、鬱陶しい顔つきになっていた。

 ユキは恥ずかしくて下をむいたままだった。

「そういえば、今日、マリがユキのことなんか心配してたよ」

 キースは、おかずを口に入れ、もごもごさせながら言った。

「えっ、矢鍋さんが。どうして」

「さあ、なんでかわかんないけど、ユキのこと気になってたみたい」