仁が全てを知った同じ頃、ミカは英会話学校で英語を学び終えて自宅に戻る途中だった。

 ユキが帰国子女で英語がペラペラなことが、以前から妬ましかった。

 ミカも英語が好きで、なんとか話せるようになりたいと頑張っていたところに、ユキの存在を知って実力の差を見せ付けられ嫉妬した。

 どんなに頑張っても、現地で育って学んでいるユキには叶わない。

 ミカが欲しいものを、何の苦労もなく自然に身に付けたユキ。

 ユキの口からアメリカはどうのこうのと出るたびにイラつき、英語が話せる自信と、それを鼻にかける態度も気に入らなかった。

 そんなときに、自分のクラスにふたりも海外留学生を迎えて、しかもどっちもかっこいいときている。

 どうしても近づきたかったが、ユキがいると近づくことすらできなくて、ユキの存在がどんどん疎ましくなっていった。

 マリは誰が見てもきつい性格で、面と向かってユキにぶつかっていくが、ミカは自分のキャラを良く知っているのか、表面はかわいらしさをアピールして内面を容易に見せない。

 気に入らない事があれば、誰にも知られず隠れて鬱憤を晴らして虐めるタイプだった。

 ミカのようなタイプの方が怖い存在だ。

 いい子を装い、ユキに近づいて友達のフリをして、隠れて虐めるなんて性質が悪い。

 普段から大人しいイメージをクラスに定着させれば、誰も陰でユキを虐めていることなんて想像もつかないだろうと、ミカは計算していた。

 また自分がかわいいのも充分知っていた。

 どうすれば好かれるか、いい印象で見られるか、そういうことをいつも考慮して計算高く狡猾になっている。

 机の中のカッターナイフ、クラスに噂を広めて落としいれ、ユキのシャツをハサミで切り、上履きに画びょうをいれたのも、全てミカの仕業だった。

 ユキに勝ちたいと、自分のルールの中で張り合う。