遠くに山が重なって屹立し、周りは畑や田んぼが広がり、その間を整備されていないあぜ道が伸びていた。

 ユキを先頭に少し距離を開けて、黒髪と金髪の外国人が、タンポポや雑草に飾られたのどかな田舎道を歩いている。

 視界が広がる広々とした土地に、ポツポツと家が所々に建っているのが見渡せた。

 その前方、小山を背にして小高い場所に建っている緑に囲まれた家。

 それがユキの住まいだった。

 二階建ての日本家屋。
 低木の茂みに覆われた庭が広く、ご近所さんといえる家が近くにない。

 誰にも邪魔されないようなもの静かで落ち着いた佇まいだった。

「ここが私の家」

 ユキが立ち止まって知らせた。

 トイラの悲しみを察して少し暗くなっていたキースだったが、ユキの家を目の前にすると、すっかり気分を入れ替えていつもの調子に戻っていた。

「へぇ、ここがユキの家か。なかなか大きいな」

 悪くはないと、まずまずの佇まいに満足し、ここでの生活を楽しもうと明るく振舞う。

 トイラは家や周辺を鋭く見つめ、辺りの様子を窺っていた。

「大丈夫だ。問題ない」

 キースに確認を取るように呟いた。

「そこはいい家だって言えばいいでしょ。なんで素直に褒めないのよ」

 ユキに言われトイラは言い直す。

「ああ、いい家だ。ユキが小さい頃育った家か?」