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 四月が始まってまだ間もない高校二年の新学期。

 クラスは友達付き合いにまだ不安定さが漂っている。


 それでも一年生をすでに経験した同じ学年の者たちにとって全く知らないもの同士ではない。

 仲の良いグループはほぼできあがりつつあった。


 しかし、春日ユキだけはまだこのクラスで一人ぼっち。

 自分が浮いている――その理由は彼女自身よくわかっていた。


 ホームルームが始まる前のざわつく教室。

 生徒たちの話し声は雑音そのものだ。


 その中に自分の話題が紛れ込んでいるようで、ユキは居心地悪く下を向いて席についている。

 その雑音がぴたりとやんだとき、ユキはやっと顔を上げた。


 担任の村上先生が教室に入って、朝の挨拶がいつものように始まると思っていた。

 だが、様子が明らかに違う。


 村上先生はドア付近でもたもたし、後ろを気にするしぐさをしている。

 まだドアの向こうに誰かがいるようだ。


 村上先生が手招きして教室内に廊下にいた誰かを呼び寄せたその時、クラス中が目を見開いてハッとした。


 息を呑むように緊張した空気がピンと張り詰め、誰もが目の前の光景を信じられないとばかりに見つめていた。


 でもユキだけはどうでもいいことのように無表情を決め込む。

 入ってきた者を見たとき、何か嫌な予感を感じていた。