「まあ、僕としてはすぐに説明したいんだけど、ユキが僕たちをまだ受け入れてないからさ」

 キースがトイラを庇うように横から言った。

 キースもまた、どうしようもないと首を竦めて苦笑いしている。

 ふたりがユキの様子を窺いながら黙り込むと、その雰囲気が自分を責めているようでユキは気まずさを感じてしまう。自分はある意味被害者だというのに。

 耐えられなくなってこの場を凌ごうとした。

「とにかく、父に訊けばわかるんでしょ。父に訊くからいいわよ」

 ユキは歩き出すが、ふたりはその場に留まったままだった。

「ちょっと何もたもたしてるのよ。家はこっちよ」

 父が関係しているとわかると、ユキはふたりを放っておけなくなった。

 ユキに言われて、のそのそとふたりは歩き出した。

 ふたりがついてくるのを確かめると、ユキは家路を急ぐ。早く帰って父親をとっちめるつもりでいた。

「なんとか上手くいきそうだな」

 キースが呟くと、トイラはぶっきらぼうに「ああ」とだけ返していた。

「相変わらず横柄な態度だな。ここはとりあえず喜んでもいいんじゃないか?」

「キースはねちねちとうるさいんだよ。放っておいてくれ」

「はいはい。仰せのままに」

 キースは多少なりともイラついた。

 しかし、トイラの横暴な態度は今に始まったことじゃなかった。

 我慢してキースは軽くあしらうも、前を歩くユキを見つめるトイラの瞳があまりにも悲しくて、怒る気持ちも消え失せた。

 トイラが素直に喜べない気持ち。
 そんなの分かりきったことだった。

 キースは自分の言った事を今頃になって後悔していた。