咄嗟のキースの行動にユキは怯む。

 キースは逃がさないように詰め寄り、にたっと微笑んだ。

「そう慌てることないじゃないか。僕達同じ方向なんだから。しかも同じ場所に行くのに、一人だけさっさと帰ることないだろ」

 顔は笑ってるが、何かを企んでいるようでどこか不気味にも思えた。

「一体、どこに住むつもりなの?」

 ユキが聞けば答えが後ろからボソッと返ってきた。

「ユキの家」

 トイラだった。

 ユキは一瞬「ん?」となるも、トイラを振り返れば、この時ばかりはしっかりとユキを見つめて訴えている。

「俺たちはユキと一緒に住むんだ」

「嘘っ!? んもう、冗談はよしてよ」

 ユキには何が起こってるかわからず、軽く受け流そうと試みた。

「冗談なんかじゃない」

 トイラの緑の目は冷静だった。

「でも、私、そんなの知らないよ」

「あれ、博士から聞いてないの。僕たちユキの家でお世話になるって」

 キースはクスクスと笑っていた。

 博士と言えば、ユキの父親だ。国際的な生物学者なのでそう呼ばれている。
 ユキが海外で過ごしたのもこの父親が海外の大学で働いていたからだった。

「そんなの聞いてません!」