「森の守り主の太陽の玉を手に入れれば、トイラの思うままに世界は操れる。そのお嬢さんを我々の森の住民と迎えることも可能」


 ジークは目を光らせ、声を落として言った。

 動きが一瞬止まるトイラ。だがありえないと鼻で笑った。

「そんなことできる訳がない。それに森の守り主の怒りを買う」

「馬鹿だな、トイラは。なんで自分の目が緑色なのか、考えたことがないんですか。それは森の神に与えられた特権じゃないですか」

「なんの話だ」

「ここまで無知だとは私も思いませんでした。あなたは、森の守り主の候補なんですよ。昔から森の守り主は必ず緑の目をしています。早い話が、緑の目を持つものが森の守り主になる力を持ってるということです」

「俺はそんなものになる気はない」

「今の森の守り主の寿命が短くてもですか。もう数百年は守ってきたでしょう。そろそろ世代交代です。森の守り主も次の後継者を探してます。緑の目を持つものはトイラ、この森ではあなたしかいない。あなたは、たくさんの森の守り駒の中から、選ばれた存在なんですよ」

「そんな話信じるもんか」

 トイラはプイと首を振った。

「それじゃ、いつかそのお嬢さんは、あなたの前からいなくなってもいいんですね。そしてあなたはまた何百年と孤独に過ごす。それが怖いことと今思ってませんか」

 トイラはユキを見つめた。

 ユキはこの話の流れが良く飲み込めない。

 キーワードを拾うだけで精一杯だった。