「森の外まで送ろう。きっと誰かが心配している」

 そう言ってトイラは人の姿になった。

 ユキは目を白黒させる。

「トイラって人間にもなれるんだ。私、幻を見ているのかな。でも幻でもいい。ねぇ、トイラ、これからもずっと傍にいてくれる? 私、友達いないんだ。トイラが友達になってくれたら嬉しい」

 ユキは背伸びして、トイラの顔にそっと触れた。

 人間と交わることはトイラの世界では禁忌とされる。

 しかしトイラはその枠に定められる事を嫌い、自由奔放だ。

 普段は森を守るためだけに、備えられた駒の役割に過ぎない存在。

 モノトーンだったトイラの心がユキというカラーで彩られたそのとき、トイラの好奇心は抑えられなかった。

 ――ユキの傍にいたい。

 それが二人の全ての始まりだった。

 果たしてそれが偶然の出会いだったのか。

 運命だったのか。

 森は全てを受け入れてトイラとユキを見守った。
 
 トイラとユキが出会ってから、二人は時間を見つけては、時を一緒に過ごすようになった。

 一緒にいる時間は同じなのに、二人が持つ時計の針の速さは違っていた。

 それに気がついた時、トイラは決断を迫られた。