昇降口で靴を履き替え、外に出ても団子状に女子たちがキースの後にいる。

 どこまで着いてくるのだろう。怪訝に思ったユキの思いが通じたのか、学校の門を出たとたんキースが女生徒たちに「バイバイ、マタ アシタ」と手を振って別れの挨拶をしていた。

 女生徒たちは、名残惜しそうにしながらその場に留まって手を振り、いつまでもキースを見送った。

 誰もついてくる気配がなくなったので、ユキは一応ほっとするが、しばらく歩いても今度はトイラとキースが自分から全く離れない。

 角を曲がってもぴったりとついてくる。

 賑やかな町並みの住宅街を抜け、さらにテクテク歩くと人気のない静かな田んぼ道に差し掛かる。

 この先は田畑が多くて民家が少ない。

 夕方に近づくにつれ、寒さがぶり返す花冷えを感じながら、静かに三人で歩いているときだった。
 流暢な日本語が聞こえてきた。

「あー疲れた。日本語話せないフリするのも神経使うもんだな」
「えっ、フリ?」

 咄嗟にユキが振り返ると、キースが左右に頭を振り、コキコキと首をならして肩をほぐしている。