放課後になると、より一層、帰宅前の女子生徒たちが押し寄せるようにやってきて、戸口でひしめきあっていた。

 一目見ようと次々に集まってこられると整理券が必要になるかもしれない。

 だが、そんな心配はユキには知ったことではないので、好きにやってくれという気分だった。
 クラスの男子たちも半ば呆れているように見えたので、少しだけ溜飲が下がった。

 すっかりこの雰囲気に慣れたキースだけが、愛想よく微笑んで手を振ってそれに答える。
 相手されて嬉しい女子生徒たちは一同に「キャー」と声を上げ歓喜していた。

 ユキは顔を引きつらせ不快な感情が露に出ると、この場から早く立ち去りたくてたまらなかった。

「さてと、あなたたちちゃんと家まで帰れるよね? それじゃあまた明日ね」

 これで二人からもクラスからもやっと開放される。

 この後は面倒見たい人が見ればいい。おあつらえ向きの人たちはあそこにいっぱいいるのだから。

 そう思って椅子から立ち上がったときだった。
 突然キースに腕を引っ張られ、自由が奪われた。

「マッテ ユキ、イッショニ カエロウ。 トイラ、 オマエモ カエルゾ」

 キースに言われ、トイラものそっと立ちあがる。

「えっ、ちょ、ちょっと待って。なんで私が」

 ユキが動揺するのもお構いなく、ふたりはユキから離れようとはしなかった。

 キースはにこやかに、トイラは不機嫌に、ぴたりとユキに寄り添う。

 こうなると仕方がない。
 とりあえずユキは女生徒たちの集まりをかき分けて教室を出ると、ふたりも同じようにしてユキの後を追ってきた。

 廊下を歩きながらキースがまた愛想よく女生徒たちに振舞うので、女生徒たちは惹き付けられるようにぞろぞろと後をついてきた。