辺りは暗くなりかけていた。

 長くふたり乗りしていると、仁は少々疲れてきている。

 それでも張り切り、いいところをみせたいと頑張っていた。

 ユキの家の近くに来ると、辺りはすっかり日が落ちていた。傍を通った神社が不気味に見える。

 暗いのでユキの家の前まで仁はしっかりと送り届けた。

 十分の明かりがなく、家の電気もまだついてない。
 トイラとキースはまだ帰ってない様子にみえた。

「仁、ありがとう。お母さんにも宜しくね」

「わかった」

 仁が帰ろうと自転車に跨る。

「あのさ、前回言いそびれたけど、僕、ユキのこと好きだから。それじゃまた」

 ユキの返事も聞かずに、仁は急いで坂道を自転車で駆け下りていった。

 照れくささのあまり、告白して逃げてしまったが、気持ちを伝えられたことが嬉しくてにやけていた。

 ユキは突然の仁の告白に呆然としてしまう。見送りながら暫く突っ立っていた。

 ちょうどその時、庭の茂みに隠れて、キースはトイラを羽交い絞めにしていた。

「馬鹿、今出るな。やばいだろ、その姿は」

 トイラは完全に黒豹になっていた。

「くそ、あの仁って奴。ユキと何してやがった。離せ、キース」

「何考えてるんだ、お前は。そんな姿で飛び出したら、えらいことになるだろうが。それとも仁を追いかけてかみ殺すつもりか」

 トイラは『グルルルル』と唸っていたが、必死で人間の姿に戻った。
 キースはまだ抑え続けている。