困惑した表情を隠せないまま、トイラは黙ってユキを見つめる。
 緑の目がユキを捉えると、口元が微かに震えだした。

 さっきまで感じた冷酷さがどこかへと消え去り、そこには何かを乞うような弱い心が現れていた。

 迷子のように不安を映し出し、憂いに潤んだ瞳が美しくも見える。

 まるで宝石のエメラルド。

 そう例えたとき、ユキははっとした。

 ──私、この目を知っている。どこかで見たことがある。

 その時トイラが口を開いた。

「オマエ ノ コト キライ デハ ナイ。 オレ ハ コウイウ オトコ ダ」

 トイラも日本語が話せる。
 やはりその訛りは典型的な外国人アクセント。

 でもどこか変に聞こえた。
 無理をして突っ張った虚勢。

 何か訳があるのでは? 

 そう思ったとき、トイラの瞳が冷酷さを取り戻し仏頂面へと変わってしまった。

 ユキが話す前に、トイラはまたプイと横を向く。
 それ以上話しかけるなといわれているようだ。

「あっ、ちょっと」

 ユキが関心を向けようとしてもトイラは最後まで無視をした。

 何なのこの男……

 自分を嫌っているわけではない。それなのにこの極端な態度だ。

 訳がわからず、ユキの口はただぽかんと開いていた。