居間に通されると、広々とした空間が目に飛び込む。

 カウンターキッチンとテーブルの置いたダイニングルームも一緒になっていて、座ったソファーの位置から部屋全体が見渡せた。

 掃除が行き届いている。

 その清潔さは見ていて気持ちがよかった。

 ここでも小物が目に付く。

 小さな手作りの人形、壁にさりげなくかけられたリースの花の飾り物が、コーディネートされるように部屋を彩っていた。

 母親はキッチンで早速お湯を沸かし、棚からカップを取り出して忙しくお茶の準備をしている。

「ねぇ、お母さんって素敵な人ね。新田君にそっくり」

 ユキはこそっと言っていたが、ちゃんと母親の耳にも入っていたのかくすっと笑い声が聞こえた。

「ユキちゃん、ねぇ、アメリカのどの辺りにいたの?」

 紅茶の葉をポットに入れながら母親が尋ねた。

「えっと、主にコロラド州なんですが、他の州もいろいろと行きました。あとカナダにも少しだけ

「私も昔テキサス州にちょっとだけ居たの。何もかも大きくてあの時はカルチャーショックだったわ」

「アメリカって大きいですよね。特にテキサスは大きいのが自慢みたいで、何でも大きくて当たり前って感じですよね」

「そうそう。人まで大きいよね」

 母親は嬉しいのかユキとの話が弾む。

 側で聞いていて、仁はついていけない。

「なんだよ、母さん、僕にはそんな話一度もしたことなかったじゃないか」

 トレイにお茶とお菓子をのせて、母親は運んできた。

 一緒にソファーに座り、息子には関係ないわとでも言いたげに、ユキと笑っていた。