顔を青ざめ、ユキの気が動転して言葉を失った。

 突然息苦しくなり、 パニック障害に陥りかけた。

「ユキ、ドウシタンダ」

 トイラも目を釣りあがらせて落ち着きをなくしている。
 キースにも緊張が走っている。

 ここで荒げてはいけない。二人に言ってしまえば、また事が大きくなる。

 嘘をつくしかない。

「ううん、なんでもない、ペーパーカットよ」

 声は震えるが、ユキは必死に笑おうと無理をする。

 ふたりはまだ疑った目を向けても、それ以上何もいうつもりはないユキは黙り込んだ。

 机の中で、慎重にカッターナイフの位置を確認し、刃を引っ込め、何事もなかったように振舞った。

 虐めが和らいで、いい方向に流れていたと思っていたユキには、この出来事はまだ何も変わっていないと警告されてるようだった。

 ユキは教室の中を見渡した。

 一体誰がやったのだろう。

 現実として受け入れられず、ユキはなかったことのように試みた。

 しかし、それは机の中のカッターナイフだけでは収まらなかった。