「皆さんおはようございます。今日は待ちに待った球技大会の日です!」

一旦グラウンドに全校生徒は集められて、体育委員による開会式がはじまった。
 

大嵐にでもなって中止になったらよかったのに、残念ながら空は快晴。秋の終わりと冬の始まりが混ざりあったような風の匂いが鼻をかすめる。

球技大会への憂鬱な気分が拭えないまま開会式は10分程度で終了した。女子は体育館へと移動をはじめ、男子はサッカーなのでそのままグラウンドに残る。


「なあ、優勝したら担任が飯奢ってくれるって!」

「まじ?なんでもいいの?」


男子たちもやる気がある人とそうじゃない人との温度差がすごかったけれど、美波と同じように騒がしいグループの中に必ず佐原はいる。

男子が焼き肉か寿司かで盛り上がってる中、佐原は眠たそうにあくびをしていた。


別に見つめていたわけじゃない。

でも、目が合って「お、海月」と声をかけられる前に立ち去ろうと思っていたのに、私から目を逸らしたのは佐原のほう。

声をかけられるどころか私に気づいていなかったように「あっちに行こうぜ」と、仲間を連れてどこかにいってしまった。


……なに、あれ。

いつもこっちが迷惑がったって関係なしに寄ってくるくせに。